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【サンプリング紀行】北アルプスの池沼調査 晩秋の天狗池・涸沢池

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Oct. 16, 2019. Matsumoto, Nagano.

先週の水・木曜日に後輩のサンプリングの手伝いで北アルプスに行ってきました。今回、僕がサンプリングを手伝った後輩は、北アルプスとその周辺山域の山地帯から高山帯に点在する池沼にどのような水生昆虫類が生息しているのかを調査しています※。普段は車横付けで採集ができる池や林道、沢などでサンプリングすることが多いですが、高山帯での調査では当然そうはいかず、調査地点の池に行くには登山を伴います。僕が同行したのは槍沢カールの南側に位置する天狗池と、涸沢カールにある涸沢池。稜線直下の紅葉はすでに終わっていましたが、晴天に恵まれてとても綺麗な景色の中でのサンプリングとなりました (寒かったけど)。

※上高地を含む北アルプス地域での調査は関係省庁の特別な許可を得て実施しています。無許可での採集行為は絶対にしないでください。


1日目

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横尾
Oct. 16, 2019. Matsumoto, Nagano.

今回の調査は両日とも日帰り。1日目は天狗原にある天狗池での調査だったので、槍沢方面へ向かいます。当初の予定では天狗池を調査した後に南岳小屋まで登り、翌日は大キレットの途中からバリエーションルートに入って北穂池を調査する、ということだったのですが…直前に「南岳小屋の営業、終わってるじゃん」ってことになり (ちゃんと調べとかなダメじゃん)、「ってかもう稜線は氷点下ですよ」ということもあり、結局は初日に天狗池まで上がって調査後に下山、2日目は涸沢まで上がって調査後に下山というピストンをすることになりました。まぁ冬季小屋に泊まるという選択肢もありはしましたが、自分も後輩もめちゃくちゃ強い訳ではないですし、調査でそこまで命は張れないので安全策を取りました。冬山に行ったりもしますが、基本的には寒いのは苦手です。

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横尾山荘
Oct. 16, 2019. Matsumoto, Nagano.

朝7時半頃の横尾山荘。先月末に槍ヶ岳を登ったときにも通りましたが、その時と比べると木々が随分と紅葉していました。すでに葉が落ちてしまっている木もありますね。

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先月末の横尾山荘
Sep. 20, 2019. Matsumoto, Nagano.

ちなみに先月末の横尾山荘前はこんな感じでした。一ヶ月でかなり寒くなり、季節が進んだ感じです。

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一の俣
Oct. 16, 2019. Matsumoto, Nagano.

今回は調査で日帰りなので、さくさく登ります。荷物も先月登ったときよりも軽いので楽でした。あとは平日の真ん中に行ったので人がとても少ない。調査で北アルプスに来られるというのはとても嬉しいですね。

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槍沢ロッヂからの景色
Oct. 16, 2019. Matsumoto, Nagano.

槍沢ロッヂの目の前は紅葉がとても綺麗でした。ここでしばし休憩。

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ババ平
Oct. 16, 2019. Matsumoto, Nagano.

ババ平まで来ると紅葉はほぼ終わり。少しだけ残った葉がちらほらという感じです。

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天狗原分岐まであと少し
Oct. 16, 2019. Matsumoto, Nagano.

「もう少し!あのカールをトラバースしたらその先に調査地 (池) がある!」と2人で話しながら歩みを進めます。以前、後輩が山で見かけた子どもは疲れて登山道で泣き出してしまっていたそうなのですが、お母さんが「山は頑張って歩けば必ず目的地に辿り着けるんだよ。人生には努力しても目標に辿り着けないこともたくさんあるけど、山は努力したら絶対に目標に辿り着けるから頑張ろう。」と諭していたそうです…それ、子どもにわかるのだろうか…?こっち (大人) の方が心に刺さりますよ。

「ってかさ、今日って晴れ予報だったけどさ、めっちゃ稜線に雲掛かってない?

僕は過去に2回、天狗原に来ていますが、濃霧と霧雨で一度も天狗原から槍ヶ岳を拝んだことがありません。天狗池に槍ヶ岳が映らなかったら、それはもう標高の高いガレ場にあるただの水たまりです。まぁ調査なので池があればそれで良いわけではありますが…ちょっと残念な気持ちを抱えて登って行きます。

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天狗原分岐
Oct. 16, 2019. Matsumoto, Nagano.

ようやく天狗原分岐まで辿り着きました。横尾を出発してから3時間ほど。やはりそれなりに時間が掛かりますね。でも、ここまできたらもう着いたようなもんです。そして…このあたりから急に稜線の雲が取れ始めたのです!今年度は科研費が採択されたり、論文が良い雑誌に通ったり、色々と上向きなのでこれはいけるかもしれない!と心躍りながら最後のガレ場をトラバース。

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槍沢カールをトラバース
Oct. 16, 2019. Matsumoto, Nagano.

あの岩壁の脇を抜けたらすぐに天狗原。歩いていると見る見るうちに雲が上がっていきます。

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槍沢カールから望む槍ヶ岳
Oct. 16, 2019. Matsumoto, Nagano.

カールをトラバースし終えて振り返ると、しっかり槍ヶ岳が見えました!あとは天狗池に行くだけ。この日の勝利は目前です。

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天狗池と常念岳
Oct. 16, 2019. Matsumoto, Nagano.

槍沢カールのトラバースを終えて、少しガレ場を進むと眼下に天狗池が見えました。ここで気づいたのですが、過去2回、天狗原に来て見ていた池は、天狗池じゃなかった。ガスっていて槍ヶ岳も見えないし、展望も何もない状態だったのでわからなかった (正確には「本当にここから槍ヶ岳見えるのか…?」という違和感はあった) のですが、特に気にすることなくこの日までいました。この日、僕はようやく本当の天狗池に辿り着くことができたのでした。

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天狗池と槍ヶ岳
Oct. 16, 2019. Matsumoto, Nagano.

この日は少し風があったので完全な水鏡とはなりませんでしたが、少し風が凪いだ瞬間を狙って、一応、水面に逆さ槍が映った瞬間も撮ることができました。僕はもう満足です (いや、調査も手伝いました)。こんなところに生物なんかいるのか?と思う人もいるかと思います。確かに種数は少ないのですが、カワゲラの仲間、トビケラの仲間、ユスリカの仲間、ゲンゴロウの仲間などなど、意外と水生昆虫が棲んでいたりします。中には一時的に池にいるだけのものもいますが、高山池沼でちゃんとライフサイクルを回しているものもいるようです。ちなみに天狗池の標高は 2,517m です。

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天狗池から望む槍ヶ岳
Oct. 16, 2019. Matsumoto, Nagano.

そして調査が終わる頃には雲は完全になくなり、雲一つ無い晴天に。やっぱり槍ヶ岳は格好いいなぁ。

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大正池と穂高連峰
Oct. 16, 2019. Matsumoto, Nagano.

下山途中には大正池から夕日が当たって綺麗な穂高連峰を拝むことができました。西穂高岳だけは雲が掛かってしまい、ちょっと残念。この日は結構ハードでしたが、翌日は涸沢なので、ちょっとだけ楽な行程です。


2日目

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横尾大橋から望む屏風岩と前穂高岳
Oct. 17, 2019. Matsumoto, Nagano.

調査2日目は横尾大橋を渡って涸沢へ。涸沢に行くのは5年ぶりくらいだったので、ちょっと懐かしい気持ちでした。そしてこの日は午後からの天気が良くない予報だったので、写真を撮るなら午前中が勝負。実際に朝の時点では大正池から穂高連峰が綺麗に見えていました。

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屏風岩
Oct. 17, 2019. Matsumoto, Nagano.

涸沢へ行く登山道で気に入っているのが屏風岩です。カッコイイですよねぇ。紅葉も程よく、朝の光が岩壁に影を作って険しさを際立たせてくれます。

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屏風岩
Oct. 17, 2019. Matsumoto, Nagano.

別の角度からも1枚。やっぱりカッコイイ。

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本谷橋
Oct. 17, 2019. Matsumoto, Nagano.

横尾から1時間ほどで本谷橋に到着。何だかあっという間でした。5年前はそんなに登山をしていなかったので、涸沢までも遠いなぁと思っていましたが、いまとなってはもうめちゃくちゃ近いと思える距離。しかも前日に登り4時間の登山をして、余裕があったので夜はクライミングジムに行って、次の日に登っているので自分でも体力が付いたなぁと思います。でも右奥に見える北穂上空には怪しい雲が…。

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南岳
Oct. 17, 2019. Matsumoto, Nagano.

本谷橋から少し登ると南岳が見えましたが、こちらの上空も怪しい雲。この後、どんどん雲が稜線に掛かっていきました。

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見えてきた涸沢カール
Oct. 17, 2019. Matsumoto, Nagano.

涸沢カールが見えてきましたが…だいぶ厚い雲が上空にいますね。これはもう稜線が綺麗に見えることはないな…と思いつつ、でも屏風岩は綺麗に撮れたし、まぁいいか、と切り替えて登って行きました (そもそも目的は調査だし)。

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横尾本谷
Oct. 17, 2019. Matsumoto, Nagano.

振り返ると横尾本谷が見えますが、南岳の山頂はすでに雲の中に隠れてしまいました。

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涸沢
Oct. 17, 2019. Matsumoto, Nagano.

涸沢ヒュッテが見えてきましたが…北穂・涸沢岳方面の稜線は完全に雲の中です。まぁこればかりは仕方ない。ひとまずヒュッテに向けてもうひと頑張り。

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涸沢カールから望む大天井岳方面
Oct. 17, 2019. Matsumoto, Nagano.

それでも振り返ると手前に紅葉、奥には大天井岳と素晴らしい景色が広がっていました。ちょうど紅葉している斜面に日が差し込んできて、とても綺麗です。

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涸沢ヒュッテのテラス
Oct. 17, 2019. Matsumoto, Nagano.

そして涸沢ヒュッテに到着。で、ヒュッテに到着したらですね、北穂・涸沢岳の斜面に太陽の光が当たり始めて上昇気流が生まれたのか、急に風が強くなって稜線を覆っていた雲が上がり始めたのですよ!さすがに今日は無理かなぁと思っていたので本当に驚きました。

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涸沢池から望む前穂高岳〜吊り尾根〜奥穂高岳
Oct. 17, 2019. Matsumoto, Nagano.

涸沢池は涸沢ヒュッテの裏手にあるのですが、そこまで移動しているうちに青空まで出てきました。前穂高岳〜吊り尾根〜奥穂高岳がバッチリ見えています。大雪渓には少しだけ残雪がありました。

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涸沢池から望む涸沢岳・涸沢槍・北穂高岳
Oct. 17, 2019. Matsumoto, Nagano.

すでに紅葉のピークは終わり、葉を落とした木々が目立ちますが、それでもこの景色はとても綺麗で、いつかは紅葉のピークに写真を撮りに来たいという気持ちになりました。でも、実は稜線が見えていたのは僕らが涸沢池に着いて調査を終えるまでの1時間程度だけ。その後、稜線は再び厚い雲の中に隠れてしまいました。今回の調査は本当にタイミングが良くて、綺麗な景色を見ながら調査をすることができたのでした。しかし今年度は色々と運が良い。ここまで運が良いと、なんだか来年度が不安ですが…運が良いうちに色々と進めておく方が良さそうな気がします。先日もひとつ論文を投稿しましたが、どうなるかな。さらにもう一つ、今年中に論文化の準備を整えたい。

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再び大正池
Oct. 17, 2019. Matsumoto, Nagano.

そしてこの日は前日よりも早く下山できたので、大正池でも調査をしました。穂高連峰は上部がすっぽり雲の中。

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大正池から望む焼岳
Oct. 17, 2019. Matsumoto, Nagano.

焼岳は頂上まで見えていました。麓は風も殆どなく、なかなか綺麗な水鏡ぶり。大正池での調査後、無事に帰宅しました。

今回はサンプリング紀行と言いつつ殆ど山行記録みたいな感じでしたが、両日とも運良く天気が好転し、最高の景色に囲まれての調査となって良かったです。本日 (2019年10月22日) には槍ヶ岳や穂高稜線で初冠雪があったそうです。調査時期としては本当にギリギリだったな。

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テーマ : 山の風景
ジャンル : 写真

tag : 北アルプス サンプリング紀行 上高地 槍ヶ岳 涸沢

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Tomoya SUZUKI

Author:Tomoya SUZUKI
1985年10月生まれ
博士 (理学)

昆虫類の分子系統地理や種分化などについて研究しています。週末は山にいることが多いです。ここではほとんど山や生きものの写真を掲載します。たまに研究の話しも書く予定です。

HP: TOMOYA SUZUKI WEBSITE
2015年5月2日開設

研究内容や写真使用の問い合わせに関しましてはメールまたは問い合わせフォームよりご連絡ください。
※画像の無断複写・転載を禁じます。

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